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Baby Bump ベビー・バンプ/ママと一緒のミッキー・ハウス

ポーランド映画 (2015)

シングルマザーの母と2人だけで暮らすミッキー・ハウスが、幼少期から思春期へ移行する際の様々な葛藤を描いた作品。主役のミッキーを演じるのは、撮影時13歳のカツペル・オルシェフスキー(Kacper Olszewski)。年齢的にも内容にぴったりだ。しかし、常識的なのはそこまでで、後は非常に不可解で、一度観ただけでは意味不明な映像が連続する。評論家の言葉を借りれば、「思春期へと移りつつある11歳の少年〔映画の設定〕、特にその少年がシングルマザーの秘蔵っ子になっている場合、『自分とは? 性とは?』に対して感じる捉えどころのない思いを、カートゥーン、クリップアート、小気味よいモンタージュ、驚くべきインターカット、突飛な編集を多用し、ファンタジーと現実を融合させた作品」となる。R16指定だが、俳優自身の性描写はほとんど皆無、しかし、性器がクローズアップでフラッシュ映像的に入るので、観ていて居心地は悪い。少なくとも、主役のカツペルは、この映画の試写には参加できなかったに違いない。この映画は、2015年のヴェネツィア国際映画祭でクィア・ライオン賞を受賞している。賞が特殊なだけに、賛否両論というか好き嫌いの分かれる映画で、評論家によっても意見はかなり異なる。ただ、現実とファンタジーの境が曖昧な点と、ポーランド映画なのに主人公のアルターエゴが英語で話して分かり辛い(ここだけ字幕がない)点には感心しない。ミッキーは思春期への移行に対して極めて慎重かつ神経質で、これは監督の自己主張かもしれないが、実際にはこれほど後ろ向きでも、おどおどしてもいないはずで、そこにも違和感を覚える。プラス、こんなに大きくなっても、母から幼児みたいにべた惚れされ、その状況を甘受している面があることにも。いずれにせよ、異質で、これまで誰も観たことのない世界に遭えることは確か。最後に、写真のことで付記すると、映画に2画面表示や横長の部分があるため、サイズを3段階に分けて使用することにした(幅を一定にするため、横長の場合は上下に空白ができるため、空白部の色を若干濃くした)。

ミッキー・ハウスの物語は、大きく2つのパートに分けられる。①ミッキーが母親から如何に過度に愛されているか、②ミッキーが成長に伴う体の変化を如何に恐れているか、である。後者はさらに、a)ミッキーは自分の耳がだんだん大きくなることに危機感を持っている、b)ミッキーはニキビや勃起など思春期で初体験することに慄いている、c)2人きりの生活なので、母の裸がよく目に入り、それが気になるようになってきた、の3つに分かれる。このうち、a)は、形成外科で耳を見えにくくすることを目標とし、資金を得るため、ドラッグに汚染されていない自分の尿を他の生徒に売ろうと考える。そして、お金が貯まるまでの暫定措置として接着剤やテープで耳を貼り付ける。尿は多くの生徒に売れたが(それだけ生徒間に麻薬が蔓延している証し)、検査の結果、成分がすべて同一と分かり、尿の出所が特定され、母がその犠牲となってしまう。これが全体のストーリーの3分の1を占めている。b)とc)は、1つの流れとはならないが、全編を通じてちりばめられている。その点は、①の困った母親の存在も、始終登場するが、あくまでトピックス的であり、1つの流れにはなっていない。総括すると、耳が変だというミッキーの思い込みに端を発した尿検査の問題が、それを摘発した警官と母の犠牲的性行為にまで発展し、ミッキーが罪の意識で悩むというストーリーが主軸となる。この軸の周りに、ミッキーがいつまでも「可愛いわが子」でいて欲しい母親、ミッキーを常に過剰な方向に誘導しようとするもう一人の自分(アルターエゴ)、孤独な学校で一人ミッキーに好意を寄せる奇妙な少女、そして、思春期に特有な諸現象に困惑するミッキー自身の4者が絡み合い、物語が進行する。映画を極めて分かりにくくしているのは、外部からミッキーに加えられる様々なアクションや、ミッキー自身の体の変化が、実際に起こった現実だけなく、ミッキーの夢や空想を通じて映像化されていて、しかも、両者は何の前触れもなく入れ替わり、その区別すら判別困難な場合がある点だ。例えば、あらすじに取り上げたエピソードは25あるが、ざっと内容を示すと、1()、2(現実)、3(現実)、4(現実→過去の体験→現実→空想→現実→仮想現実)、5(仮想現実空想→現実→空想→現実→空想→現実→空想?)、6(現実→疑似体験→現実)、7(現実→空想)、8(現実→空想過去の体験疑似体験)、9(空想→現実)、10(現実→空想)、11(現実→空想)、12(空想→現実)、13(現実→疑似体験空想→現実)、14(現実→過去の体験→現実)、15(現実)、16(現実→空想過去の体験空想→現実→空想)、17(悪夢に近い幻想)、18(現実)、19(仮想現実空想)、20(現実→空想)、21(現実→仮想現実→現実)、22(仮想現実空想)、23(空想)、24(空想)、25(仮想現実→現実)のようになっている。しかも、22でアルターエゴを自ら抹殺するまで、アルターエゴがミッキーに囁きかける英語が、現実、空想を問わず挿入される〔あらすじでは、DVDに忠実に、アルターエゴが英語で話しかける言葉を英語(青字)でそのまま記載した〕。これでは、観客に、「混乱するな」と言っても無理な話だ。空想にもいろいろなレベルがあるため〔現実かどうか見極めにくい〕、あらすじで正確に解説できたかどうか自信は全くない。興味のある方は、ご自分で体験されることがベストだと確信する。DVDはebayが一番安価だったが、先に述べたようにアルターエゴの英語に字幕が付いていない。ある評論に、ポーランド版には、その部分にポーランド語の字幕が付いていると書いてあったので、そちらを購入する方がbetterかも知れない。

カツペル・オルシェフスキーは、13歳くらいだが、時としてもっと幼く見える。なんせ、母から着せられているパジャマや子供部屋がピンクで統一されているので。ただ、それに反発して黒づくめで登校する時は、如何にも中学生らしい。ポーランド人らしい灰色の瞳が印象的なハンサム・ボーイだ。この映画以外の出演は、すべてTV映画かTVのシリーズ物。


あらすじ

映画は、パープルピンク系のチェックのテーブル・クロス上に横たわる主人公ミッキーから始まる。着ているパジャマも細かな淡いピンクのチェック柄。中学生の男の子にしては奇妙な取り合わせだ。しかし、何と言っても目を惹くのは、頭から生えているウサギの耳。もちろんこれは現実ではない。今、ミッキーは夢を見ている最中だ。現実のママは薄化粧で、耳には小さなサクランボ形のイヤリングを付け、爪は伸ばさずマニキュアもしていない。しかし、夢の中では、真っ赤な口紅を付け、耳には生のサクランボがぶら下がり、鉤爪には真っ赤なマニキュア。態度も妖艶だ。そして、TVアニメのジェルボア・マウスが、もう一人の自分(アルターエゴ)として、ミッキーの行動をうるさく指図する。マウスの話す言葉は、ポーランド映画なのに、すべて英語。残念ながら字幕がないので、よく聞き取れない〔字幕は、ポーランド語の部分にのみ付いている〕。ミッキーの夢は、ミッキーが抱いている不満・不安が具現化する場だ。ミッキーの不満・不安とは、①最近、思春期に入り始めていて、自分の体なのに変なことが起きている、②耳が普通より大きいと思い込んでいて、目立たないようにしたいと切に願っている、③ママがいつまでも自分を幼児のように扱っている、④いつも孤独で学校には誰一人同性の友達がいない、などなどきりがない。今日の夢は耳だ。耳が恐ろしく大きくなっている。そして、自分はジェルボア・マウスにように小さくなって、テーブルの上にいて、横では、巨大で派手なママが、イチゴジャムの瓶からナイフでジャムをとっては、パンに塗っている。手が滑って、ジャムがミッキーの顔にかかる。体が小さいので、少しのジャムでもかなりの量だ。少し舐めてみる(1枚目の写真)。食卓にネズミがいることに気付いたママが、ジェルボア・マウスをナイフを持って追う(2枚目の写真)、マウスはジャムの瓶に追い詰められる。マウス、イコール、ミッキーなので、彼も同じようにジャムの瓶に張り付き、剥がそうとして耳がちぎれ血がほとばしる。再度、テーブル・クロスに横たわるミッキー。気が付くと、お腹に亀裂が出来始めている(3枚目の写真)。これは、思春期による体の変化への不安を表している。
  
  
  

この奇妙な夢から目覚めたミッキー。横には、ママが添い寝をしている。ミッキーは、シングルマザーのママにとって、いつまでも「可愛いベビーちゃん」なのだ。だから放さない。ミッキーの寝ているベッドは、シーツも枕カバーも、パジャマと同じ細かな淡いピンクのチェック柄。ミッキーの部屋のカーテンもピンク。まるで女の子の部屋だが、それがママの趣味。一緒に目を覚ましたママは、ベッドの脇に置いておいたジャム付きのパンを、ミッキーに勧める。このジャム付きパンこそ、さっきの夢の中で、ママがかぶり付いていたものだ。それを思い出して、食欲をなくすミッキー(1枚目の写真)。次にママがしたことは、ミッキーをくすぐること(2枚目の写真)。かなり異様な母子関係だ。もちろん、ミッキーはそれが嫌でたまらない。「前は、もっとくすぐったがったのに」。「そんなことないよ」。頬をつついて「いつから?」。そして、ママは学校に着て行く服を見せる。全部ベージュ色だ。「どう? 可愛いでしょ? 角砂糖みたい」。そう言うと、今度は頬を撫でながら、「私のちっちゃな角砂糖ちゃん」。ミッキーは、キスされるのを嫌がる。「みんな、私のものよ」。危機感を覚えるミッキー。ここで、ジェルボア・マウスの声が心の中に響く。「Applaud! Applaud! Now! Come on! Do as I say. Do it.」〔Applaudは、手を叩け〕。言われた通り手をポンと叩くと、いきなり2画面に切り替わり、うざったいママが別画面に移動する(3枚目の写真)。2画面表示の場合は、効果がよくわかるように、元サイズのまま写真を使用する。
  
  
  

ママがいなくなってミッキーが最初にしたことは、ベッドの下に隠しておいた2リットル入りのペットボトルの水をガブ飲みすること(1枚目の写真)。今日、学校で、自分の尿を大量に売るためだ。学校では、生徒がドラッグをやっていないかチェックするため尿検査が実施されている。多くの生徒がドラッグに走る中、ミッキーの「きれい」な尿はひっぱりだこなのだ。ミッキーが尿ビジネスに熱中するのは、耳の形成手術代を稼ぐため。それほどまで耳のことが苦になり、冒頭のように夢にまで出てくる。右画面では、ママが別室で美容バイブレータで腹部の脂肪を減らしている。次にミッキーがしたことは、ママが置いていった「おぞましい」服を棚に片づけ、尿を小さなペットボトルに入れる。そして、男らしく、黒のフード付きスウェットシャツの上に、黒のレインコートを着て、手に黒のヘルメットを持ち、きれいな尿のため、生のニンジンを齧る(2枚目の写真)。出かける前に鏡を見ると、やはり耳が気になる。「There's still visible.」という内なる声に導かれ、瞬間接着剤を取り出し、試しに親指と中指に付けると離れなくなってしまう。「You have to cut. Cut away.」「Concentrate on yourself.」。その声に従い、小さなナイフで切り離す(3枚目の写真)〔指を切ったので絆創膏を貼る→声に従うと事態が悪化することを示す最初の例〕。右画面ではママが茹で卵を食べている。卵を食べるのは、批評家によれば、思春期へ突き進むミッキーのエネルギーを食べてしまい、いつまでも子供のままでいて欲しいと思うママの心象を表しているとか。
  
  
  

ミッキーは、キックスクーターで学校に向かう。ハンドルにはスピード計、その下に大きな飾りカバーの付いた自慢のスクーターだ。学校の入口の廊下には金属探知機が置かれ、厳重な検査もあるので、ミッキーは、校舎の裏に回り、トイレの窓から尿の入ったペッドボトルを入れようとする。その時、校内で唯一ミッキーに気がある「お邪魔虫」的な女の子が寄ってきて、「何してるの?」と訊くものだから、肝心のボトルが宙に浮いてしまい、「ちょっと立ち止まって、飲もうかと…」と言って誤魔化す。「なら、飲みなさいよ」。ミッキーの頭には、今朝、尿を入れた時のことが過ぎる。仕方なく、キャップを開けて、自分の尿を口に入れるミッキー(1枚目の写真)〔飲み込みはしない〕。女の子は、「あなたのこと好きよ。乳首、見せてあげようか。だけど、マシュマロちょうだいね。それと、つかんじゃだめ」。そこで、口に尿を含んで堪えていたミッキーが、おならをプー。「行くわねプー君。サヨナラ」〔この「サヨナラ」は日本語〕。女の子が行った後、必死で尿を吐き出すミッキー。何度も残った唾を吐く。一段落すると、今度は胸が膨らんでくるような気がする。内なる声。「And that's supposed to be a pleasure. Girl!」。ミッキーも、少しはあの子に気があるのかも。ミッキーが再度トイレの窓から尿のペッドボトルを入れようとすると、中から窓が閉められてしまう。仕方なく玄関に向かい、探知機が不法突破された騒ぎにまぎれて、スクーターごと探知機をくぐるが、その先に固まっていた生徒たちに気付いて、転倒。足をひどく擦りむいてしまうが、それよりも何よりも、ペットボトルの尿が全部廊下にこぼれてしまう(2枚目の写真)。辺りに漂う異臭。しかし、今日、尿を渡す約束だ。ミッキーは、学校が終ると急いで薬局へと向かう。そこでは、仮面を付け、しゃべらず、要求を紙に書いて利尿剤を買うが(3枚目の写真)、実際にそうしたわけではなく、ミッキーのやましい心を象徴的に示した映像表現だろう。
  
  
  

その後、ミッキーは、場末のガレージの前で利尿剤を飲んでから大量の水を飲むが、そんなに簡単に尿は出ない。ガレージが開くと、そこに現れたのは上級生のワル3人組。ミッキーは、どうしてくれるんだとばかりに野次られる。その時のミッキーの顔の両脇に出る「I LIKE CACK」(僕はクソが好きです)の文字は、負け犬の自虐的な意識表現か? 「ママさんに変わったことないか?」「魅力的なママさんだよな」「お前のママはビンビンだ」「一発やりてぇ」などとからかわれるが、これは恐らくミッキーの空想。実際は、いつ尿が用意できるかと聞かれ、「明日」と返事。「明日とは、どういうことだ。今日だ」。「今日は無理。明日ちゃんともって来るから」。「クソガキめ。豚ども、感づいていないよな?」〔豚とは、警察のこと〕。「何をだ? わかりっこねぇ」。男の一人が、ミッキーに「そこに寝ろ」と命じる。マウスの声。「Lie down. He want to anything to you. Just lie there while and they will go on before you know it.」。画面は切り替わり、キリスト像の前、教会のロウソクに囲まれてミッキーが床に横たわっている。悪者の前に自分を差し出した犠牲者の心境だ。現実に戻り、制裁で男たちに足蹴にされるミッキー。3人のうちの女性が、「学校の半数が救われるのよ。なんせ、有機レタスと有機キャベツと有機ニンジンを食べ、お風呂にも入ってるんだから」と助け舟を出してくれる。これで、ようやく、「明日、始業のベルの前、いつもの場所だ。いいな?」と許してもらえる。「いいよ」(2枚目の写真)。翌日、学校に着き、尿を渡しに行こうとしていると、廊下にいた警官に呼び止められる。「なぜ、授業に出てない?」。「おしっこに…」。警官は、尿検査のビンをミッキーに渡し、「これに入れて、名前を書き、看護婦に渡すんだ」。この先は、ミッキーの空想。警官が「ママによろしくな」と言ってニッコリ口を開けると、歯の隙間にはママの陰毛が。「You know each other?」。トイレの個室に入ったミッキーは、片っ端からメールを打ち、隣の個室には次から次に買い手が到来。お金と引き換えに、ミッキーの尿を自分の尿検査のビンに入れてもらう(3枚目の写真、矢印の先は代金のコイン)。代金は、人によって違うような気がするが、最低で1人8ズロチ(220円)。結局、かなりのお金が貯まり、ミッキーの頭の中では、形成外科の病院の受付の光景が現実のものとして浮かぶ。「ご予約が おありですか?」。マウスが「Not yet.」と夢を遮る。その後、廊下で、ミッキーは例の女の子に会う。「検査を受けよう。尿のサンプルを持って、堂々と言いましょう。『やあ、僕はOKだ!』」と書かれた自分より大きな人型のポスターを抱えている。「これ押しピンで止めてくれる? ポスターのコンペで勝ったのよ。口に何個マッシュルーム入れられる? 私10個よ」。そして、自分が携帯で録画した上級生の双子の女性の会話を見せる。級友がマリファナの所持で捕まったことに始まり、隠語を交えたエッチな話をした後、最後は、「もっと コンドーム 要るわね」で終る。女の子が、すかさず「私も 持ってるわ」。何とも答えられないミッキー(4枚目の写真)。「押しピンのこと言ってなかった?」と口をにごす。「You just don’t get it.」とバカにした声。去って行くミッキーに向かって、女の子から「ホモ、ゲイ、おかま」と野次られる〔最後の言葉が現実か空想かは不明〕。
  
  
  
  

ミッキーは自分の部屋に入ると、引き出しの中に稼いだお金を隠す。「372.41」。約1万円。尿を売っただけにしては 相当の収入だが、手術にはとても足りない。しかし、もっと大きな問題が。お金を数えている姿を、ママに見られてしまったのだ(1枚目の写真)。ママは何も言わずに出て行ったが、ミッキーは慌ててベッドの下に隠す。その時のママの服だが、ミッキーの目には一瞬スケスケの薄着に見え、すぐに同色だが普通の服に戻る。ママが、傷の手当に戻って来ても、ママのおっぱいや外陰部が頭の中を過ぎる。ママは手当てをする前に、ベッドに腰掛けているミッキーに顔を寄せると、「行ってきますのキス、しなかったわね。お早うのキスも。そして、黙って出てった」「罰としてキス3つよ」。そして、「ここと ここと」と言って両方の頬を触り、さらに、「ここ」と言って膝頭に触る。傷の手当をした後、ゴムの膝当てを付けられるが、ピンク色で、ブラジャーのような形だ。それが済むと、ママは、慈しむように、ミッキーのももの上に頭をつける(2枚目の写真)。すると、ミッキーが急に立ち上がる。パンツが勃起で突き出している(3枚目の写真)。恥ずかしくて隠すミッキー。ママは戸惑って顔を逸らす。その時のママのとっさの言葉が笑わせる。「バナナ、食べたい?」。その後は、普通に戻り、「また、接着剤で耳を張り付けたのね。もう やっちゃダメよ。ケガするから」。
  
  
  

次のシーンで、ミッキーはトイレにいて、パンツの中を覗いている。さっき、ママのせいで、尿道球腺液(カウパー腺液)が出てしまい、手で触ってベトベトしているので気持ち悪がっている(1枚目の写真)。トイレには鍵をかけたのだが、ママがドアをガタガタさせて、「開けなさい」と言うので、ますます焦ってしまう。初めての経験にショックを覚えたミッキーは、自分の体がどうなってしまったかと心配し、真夜中に、雨の振る中、キックスクーターで何故か墓地へと向かう。そして、大きくて平たい墓石の上に、ヘルメットを取って横になる(2枚目の写真)。それは、ミッキーにとって、キリスト像の前で、ロウソクに囲まれて横になっていることと同じなのだ(3枚目の写真)。誰にも相談できない中、心を寄せられるのは神様だけ。ミッキーは、眠るように目を閉じる
  
  
  

ミッキーが帰宅する。ママは、息子が、こんな夜更けに黙って出かけたことに腹を立てている。「どこにいたの?」。答えない。「風邪ひくわよ。早く脱ぎなさい」。何もしない。怒ったママは、スクーターをキッチンに持ち去る。「See what you've done. Get undress and apologize.」。ママが料理用の電動ノコギリを手にしている。「Apologize, apologize!」。しかし、ミッキーは何もしない。業を煮やしたママが実力行使に出る。スクーターの飾りカバーをノコギリで切り始めたのだ。ママの前まで行って、「お願い」と頼むが効果なし。「二度としないから」。ママは切り続ける。「ママ、お願い、二度としないから、ホントだって」(1枚目の写真)。ママが手を止めたのは、「ごめんなさい」の言葉を聞いてからだった。「濡れた服を脱げと言ったでしょ。脱がないの?」。素直に脱ぐミッキー。それでも、厳しいママの言葉は続く。「二度とスクーターに乗らないと約束なさい」。「Swear!」。「誓うよ」。「それで?」。「約束する」。カッとしてやり過ぎたことを反省したママは、無残に切られた飾りカバーを前にうな垂れる。ミッキーは、そのママをいたわるように抱く。ママは抱き返す(2枚目の写真)。ママは、突然、「チャバタはどこ?」と言い出す。ミッキーは、かって、「チャバタを買ってきて。夕食は、ペパロニ・チャバタにするわ」と言われたことを思い出す。「看板で見たよ、安売りだって」。ここで、ミッキーが看板を見たシーンが挿入される(3枚目の写真)。本筋には関係がないが、パッチワーク的な映画の雰囲気を伝えるため敢えて加えた。「So, actually, what is a ciabatta. Cunt or ass?」(cuntは女性の性器、assはお尻)。ここで、ママのお尻〔大きなニキビ付き〕の映像が入る(4枚目の写真)。ペパロニ・チャバタは、先ほどの校内での双子の会話の中でも出て来たが、ペパロニは隠語でおっぱいの意味がある。チャバタはイタリアの普通のパンのことだが、外陰部の意味があるのかも?
  
  
  
  

ミッキーがベッドの上で、ぼうっと目を開いている(1枚目の写真)。ママの声が聞こえる。「こっちに来て。早く。何かが噛み付いてるの」。さっきのママのお尻が拡大して映る。気持ち悪そうに赤い突起物を見るミッキー(2枚目の写真)。「Press! Squuze! Help her!」。その声に従って、ぎょっと潰すと、膿がミッキーの顔にかかる(3枚目の写真)。映画ではママのお尻になっているが、実際は、ミッキーの額にできたニキビをママが潰したのであろう。次のシーンでは、ママが指の先に、ミッキーの顔にかかったのと同じ膿を付けて、「おめでとう」と言っている。「Your forehead celebrates its first zits.」。ママがミッキーを後ろから抱きながら、「始まったのね」と囁く。「Unfortunately.」。このマウスの言葉は、ミッキーの心の代弁かも。ママは、「私のちっちゃな坊や」(4枚目の写真)と囁き、首にキスする〔ミッキーは逃れようと必死〕。その直後、ミッキーが便器に向かって吐くシーンがある。汚いので写真は使わない。トイレのドアの背後から、「会えないかな。お願いだ」。「会いたくないわ。もう終ったのよ。会わない約束でしょ、どこかへ行きなさいよ」という会話が聞こえるが、相手が誰なのかは分からない。ただし、これはミッキーの夢でも幻聴でもなく現実のようだ。
  
  
  
  

キッチンにママが座っていて、そこにミッキーが入って行く。ミッキーは あちこち扉を開けて何かを探している。ママは イスから立ち上がると、手に瞬間接着剤の袋を持って、「これ探してるの?」の訊く。「そうそれ」と手を伸ばすミッキー。「ちょうだい」。しかし、ママは渡してくれない。「二度とダメよ」。「ママ、お願い!」。奪い合いとなるが、ママの方が背が高いので、ミッキーにはどうしても届かない(1枚目の写真)。「学校に行けないじゃないか!」。「いつから学校が好きになったの?」。「嫌いだよ。でも 行かないと」。「You have to cut. Cut away. Sever and make money. Earn, earn, earn.」。そのあと、形成外科の病院の受付の絵が映り(2枚目の写真)、「Change body, change your life. Just do it.」。受付の女性が「ご予約が おありですか?」と訊く。空想の医院で 女性患者が医師に訴えている。「耳が離れ始め、長くなっています。もう何日も、ガリガリ言う音が聞こえます。いつも痛いんです。感覚が麻痺し、傷跡も。出血まであります」。まさに、ミッキーの代弁だ。ミッキーの耳から血がしたたり落ちる。「傷はまだ治りきっていません。手術後、2週間で胸の愛撫は早すぎます」。その予想外の言葉で、ミッキーの頭の中には巨大なおっぱいが出現、患者の胸が膨らむ。ミッキーは勃起し、両耳からはダラダラと血が流れ落ちる(3枚目の写真)。「You're erecting the tent. Raising the mast. Something's wrong. I thought you’d back to health.」。すべてが空想の世界。
  
  
  

ミッキーにとって、一大事が始まる。誰かが、アパートのドアをノックする。ママが開けると、それは学校の警官だった。「息子さんは在宅ですか?」。「息子は学校よ」。「学校?」。「そうよ。他に どこへ?」。「家では どんな態度ですか?」。「普通よ」。「ご主人は? 息子さんとご主人の仲は?」。「離婚したの」。「そりゃ、大変ですね。私も離婚しましたから」。「今は、誰でも離婚してるわ。もっと困ったことが多いもの」。「例えば?」。「何よ?」。「麻薬です」(1枚目の写真)。それを聞いたミッキーは、どきりとして、盗み聞きを止め、バックパックをベッドの上に置き、チャックを開ける。「ウチには無関係ね」。「知らぬは親ばかりとか」。「何が言いたいの?」。「校長からの申し出で、全生徒の尿検査を実施中です」。「尿?」。ミッキーは、バックパックから尿を入れていたペットボトルを取り出して、ゴミ袋に入れる(2枚目の写真)。「父兄には夕方の集会で予告しました。何もご存じない?」。「忙しいから」。「お仕事は?」。「これ何なの? 尋問?」。「我々は、生徒の尿中の麻薬について検査しました。非常に奇妙な結果が出ましてね。検査結果がすべて同じだったのです。尿は、一人の生徒のものでした」。「それ、何かの ほのめかし?」。「我々は、売買が行われたと踏んでいます」。「尿の?」。売買のシーンが挿入され、「Bingo!」。「尿を手渡ししなかったのは、数名の生徒です。あなたの息子さんもその一人です」。「息子は、いい子よ。礼儀正しくて、素直で、学校でも良くやってるわ。問題を起こしたことも、喧嘩をしたこともない」。「What's to be done? You're cunt, stinky cunt!」。女性の外陰部がフラッシュバック的に何度も映る。警官は名刺を渡し、「私の名刺です。何か気付かれたことがあれば、それとも、もし他に何かあれば…」。「寂しさとか、欲求とか?」。「必要な時は何なりと」。再度ノックの音がし、再び警官。前は、白いローブで前を隠していたママが、今は前を開けて薄いシャツを見せ、乳首の部分に上から「乳首のような飾り」を貼り付けている。この姿と次の言葉は、ミッキーの幻想か? 「私を抱きたいの?」。警官は、尿の容器を差し出し、「今すぐ、これを渡して下さい。尿の検査です。目を離さないように」。ここで、ネズミの交尾シーンが挿入される。「お茶でも飲みません? お腹空いてるでしょ? ペパロニ・チャバタを作るわ」(3枚目の写真)〔ペパロニ・チャバタは、セックスの隠喩〕と言って、部屋に招じ入れる。ママは、大好きな息子を救うために、警官に身を売るのだろうか?
  
  
  

警官が帰った後、ママは、トイレにいたミッキーに詰め寄り、耳を後ろに貼り付けたテープを、むしるように剥がし取る(1枚目の写真)。「Yap. Black and curly.」。ミッキーの目には、ママの歯の隙間に黒い陰毛が見える。警官のだ! 「What is the times come to. Who's guy into the dogs hearly in the pepperoni.」。ママの顔を見ながら、気持ち悪げに、歯に挟まってるよと指で示すミッキー(2枚目の写真)。ママは、歯から取ってよく見て、「糸の切れ端よ」。恐らくこれが正解であろう。陰毛はミッキーの勝手な想像かも。ママは、警官から渡された尿の容器をミッキーに持たせると、お尻をまくって便器に座る。そして、「渡して」と言うが、ミッキーは、ママのお尻を見ないよう、目を手で隠しながら「嫌だ」と断る(3枚目の写真)。
  
  
  

ママは、そのままバスタブに行き、「私のちっちゃな角砂糖ちゃん、こっちに来て、背中洗ってちょうだい」と呼びつける。「いつものように泡々だから、入ってらっしゃい」。ミッキーは、顔を背けたまま、ママの背中をスポンジで擦る。ママは「楽しい?」と訪ねる。「Answer with conviction.」。ミッキーは内心の声に従い、「ううん」と答える。内心の声は「And behave nicely. Just a moment longer.」と、嫌でもちゃんと擦れと指示し、「Every boy in the world wash his mother’s back. It's normal.」と気休めを言う。しかし、擦りながらミッキーは勃起してしまい、頭の中で、冷蔵庫に行って製氷皿から氷片を出して、パジャマの中に入れて冷やすことを連想する(2枚目の写真)。「It's not normal. It's abnormal. It's sick.」。その時、ママから声がかかる。「もう いいわ」。そして、訊かれたことは、「どこで、お金を手に入れたの?」。「どのお金のこと?」。「どのお金? 引き出しの中のお金でしょ」。ママは、泡にまみれた尿の容器(中味入り)をミッキーの手に握らせ、「これに、丁寧に名前を書いて、明日学校に持って行きなさい。そして、二度とやらないの」。「何を?」。「分かってるくせに。その子達の名前は?」。「どの名前?」。「ちゃんと、知ってるでしょ」(3枚目の写真)。最後通牒だ。
  
  
  

ミッキーは、学校へ行く用意をし、尿販売の連絡に使っていた携帯を床に捨てる。頭の中では、昨夜、尿の入った容器を持ってじっと考えていた姿(1枚目の写真)が浮かぶ。結局、ミッキーは学校へ行き、母の尿を看護婦に渡す(2枚目の写真)。そこに、昨日の警官が入って来る。「最新の尿検査の結果を調べに来た」と看護婦に言い、逃げ出そうとするミッキーを引き止め、「ママによろしくな。大事にしてあげろ。ストレスが貯まってるぞ。疲れているし… かなり過敏だ」。ミッキーは、「過敏」という言葉が、セクシャルな意味で使われたと想像する。
  
  
  
ミッキーは、校内の「健康食スタンド」の前で、女の子が携帯で撮った動画を見ている(1枚目の写真)。内容は、前回と同じ双子。2人は、授業中に生理が漏れてイスを汚した話をしている。見終わると、女の子は、「これが現実なのね。私、ジャーナリストになろうと思ってる」と言い、急に話題を変える。「何か飲まない? 一緒のストローで?」。「気持ち悪い」。「私たち、親近感があるのよね」。そう言うと、ミッキーの頬を両手で触る(2枚目の写真)。「It's love.」。女の子は、目を閉じて、キスしてと唇を突き出す。ミッキーがキスしてくれないので、目を開けると、「チューインガム噛んでててもいいのよ。噛み過ぎじゃなきゃ」と誘う(3枚目の写真)。ミッキーが本心から好きなのだ。その時、2人の前の廊下を、麻薬で逮捕された上級生の一団が警察に連行されて行く(4枚目の写真)。
  
  
  
  

居間で、ミッキーとママが一緒にTVを見ている。2人の間には距離感がある(1枚目の写真)。誰も食べない山盛りのポップコーンが可笑しい。2人が観ていたのは、なぜか、ジェルボア・マウスの番組。ジェルボア・マウスは、ミッキーのアルターエゴでもある。TVでは、映画の巻頭と同じように、パンにジャムを塗るシーンが放映されている。画面のアニメの女性も、赤い口紅とマニキュアをしている。そして、食卓上に姿を見せたネズミに向かって、ナイフを向ける。必死で逃げるジェルボア・マウス。その姿(2枚面の写真)は、ミッキーの夢に出て来た光景とそっくりだ〔冒頭の写真と比較!〕。ママが、「叫んでたら、食べられずに済んだかも」と言うと、ミッキーは「叫んでたよ」。ママは「不十分よ」。「See, my life is fucked as yours.」。ママはチャンネルを替え、部屋から出て行く。ここから先は、すべてミッキーの空想。「Someone has to die.」という声が聞こえる〔Someoneとはママのこと〕。そして、以前訪れた墓地が映る。墓石の上に横になるミッキー。「Sad people is always gloat. If they came back to life, they certainly wouldn't do anything to you. They wouldn't make fun of you.」。哲学めいた言葉の後、具体的なアドバイスが聞こえる。「They're sad, and dead. You're sad, and you have to live. You've got to do something.」。ミッキーは首を吊る真似をするが、すぐに止めて〔someoneは自分ではないと気付く〕、綱を投げ捨てる。アルターエゴの決定的なアドバイスは、「I love you too. And I love you even more, if you get rid of mummy.」。ミッキーは再び仮面を付ける。画面に、「僕はお前が嫌いだ。お前が殺してやる」の文字が。そして、毒入りのスープをママに飲ませる(3枚目の写真)。そのままイスから転がり落ちるママ。ここで空想は一旦途切れ、まな板の上に丸ごとのチキンを乗せ、電動ノコギリを手にしたママが訊く。「これで何を作りましょう?」。すぐに、また別の空想が始まる。仮面を付けたミッキーが、薬局の時と同じように、しゃべらずに希望を紙に書く。「ギリシャ料理のドルマデス」。サクランボのイヤリングを付けた空想のママが、ノコギリでチキンを刻み始める。「僕、気絶しそう」の紙。そして卒倒。気付くと、冒頭と同じ、ウサギ耳のミッキーがパンの上に寝ている。それにベットリとジャムを塗り、ママが頭からかぶりつく。そして、残った足を慈しむように口に入れる(4枚目の写真、ご丁寧に膝当てまで付いている)。ママを毒殺しようとして、返り討ちにあったこの空想は何を意味するのか? ママから解放されたいという願望と、それが叶わない夢であることの挫折感を示したものかもしれない。
  
  
  
  

次の幻想は、もっと激しくエロチックだ。ママが美容バイブレータでお尻をマッサージしている〔耳にサクランボが付いている〕。その姿に驚くミッキー。次の瞬間、ミッキーの首に投げ縄がかけられ、そのままママの方に引き寄せられる(1枚目の写真)。縄を引っ張っているのは、警官の上に跨ったママだ(2枚目の写真)。「I don't know what's worse.」。次は、ミッキーの射精したペニスを、男の手がつかみ、引きちぎって便器に捨てる。再び、縄で引っ張られるミッキー。引っ張っているのは、ママに跨った警官。そして、今度は、ミッキーが自分で自分のペニスを引きちぎって捨てる。両手は血だらけだ。この辺りが、一部の観客に忌避された部分だろう。映像は一瞬だが、観ていても気持ち悪い。ミッキーは、最後に首から綱を外し、部屋から逃げる。
  
  

奇妙な幻想が何だったのかは、警官の「タオルをくれ」で始まる現実のシーンで解明する。「いや、タオルじゃダメだ。染みが残る」〔濡れているのは、もちろん下腹部〕。警官はズボンを脱ぐと、ミッキーに向かって、「こんな時には、アイロンをかけないとな」と教える(1枚目の写真)。「自分でやれば?」。「まだ仕事がある。乾いてないと困る」。ママが乾かしたズボンを警官の顔に投げつけるように渡す。自分がコケにされたと感じた警官は、嫌がらせで、ミッキーの前で肉体美を誇るようにタップを踏んで見せる。それを見る悲しそうなミッキー(2枚目の写真)。警官は、ママに「終わりじゃないよな?」と言って出て行く。ママは、バスローブを首元まで上げ、ミッキーをじっと見つめると(3枚目の写真)、辛そうに自室に去って行く。
  
  
  

ベッドの上に横たわるミッキーとママ。2人の間には、「神様、どうかご慈悲を…」の文字が(1枚目の写真)。文字は、「…僕の涙を考慮して」に切り替わる。自分のした行為で、ママが警官に辱めを受けたことへの深い反省の念の象徴的表現だ。次の空想ではミッキーのお腹が妊婦のように膨れ上がっている(2枚目の写真)。「Where are you after in such a hurry? Where? Who to? What you’ve got to or where anyone?」。内なる声を無視するミッキー。声に耳を傾けた結果、ママはひどい目に遭い、僕は妊娠した。その怒りは、ジェルボア・マウスに向けられる(3枚目の写真)。
  
  
  

学校で、少女とミッキーの、ほぼ一方的な会話。「新しい映像 撮ったわ。みんな、残虐なこと好きなの。刺すのには慣れてるわ」「いつ、手術受けるの? するんでしょ? すっごく痛いって聞いたわ。私ならやらない」「私が、あなたのこと好きなの 知ってるでしょ。だから、これ見せてあげる。見返りなし。タダよ」「凍らせるだけ。耳よ、おっぱいじゃなくて。勝手に落ちるわ。痛みも出血もゼロ。ほらこれ」。そこまで、ペラペラとまくし立てると、ミッキーにスプレー缶を見せる。「水道管を切断する前に、まず凍らせるの。そう缶に書いてある。管を凍らせられるんなら、耳だって凍るでしょ」「さあ、取って。あなたへのプレゼント。救いの手よ。このために、お金 貯めて、買ってあげたのよ」「愛してるわ」(1枚目の写真)。ミッキーは、スプレーをポケットにしまう。少女は、さらに、「これも あげる。魔法の薬よ」。もちろんドラッグだ。もう尿を売ることもないので、ありがたく頂戴する。この先は、空想。帰宅したミッキーは、ドラッグを飲み、ハイな状態になってから、耳にスプレーをかけて凍らせ、ペンチで砕く(2枚目の写真)。そして、自分のおっぱいにもスプレーをかけて凍らせ、これもペンチで突いて砕く。しかし、妊娠しているお腹には手を付けられない(3枚目の写真)。このシーンは、尿の売買ができなくなり耳の手術ができなくなったが、それに対するミティゲーションが提示されミッキーがほっとしたことと、体の変化は容赦なく続いていること、の2つを表現したものであろう。
  
  
  

この直後にミッキーは、ママに手ずから卵を食べさせてもらっている(1枚目の写真)。これは現実。卵は思春期へ入って行くミッキーのエネルギーなので、それを食べさせることは、ママがミッキーの成長を容認していることになるのだろうか? しかし、内なる声が「She can do what she likes with you. She's got the power. You can't let her do that. Tell her. Go on. Give it her straight.」と言うので、事態は逆のようだ。ママがいなくなると、ミッキーは食べたものを全部吐き出す。そして、立ち上がると、お腹から変な音がして、白い卵が落ちてくる(2枚目の写真)。従って、ママが姿を消してからは、ミッキーの空想だ。ミッキーが、床に落ちてヒビの入った卵に耳を当てると、ゴロゴロというような音が聞こえる。「Strong and menacing like you.」。次に、学校で、ミッキーは看護婦に呼び出され、「どこで尿を入手したの?」と問い質される。「尿よ。誰から買ったの?」。「僕です。僕の膀胱から」。「妊娠してるの?」。ショック! この驚天動地の宣告の後、ミッキーの顔の周りに現れる文字が面白い(3枚目の写真)。「ホワイトイーグルは誇り高く舞い上がる」「ホワイトイーグルはポーランドの子供の父」とある。ミッキーは、「そうさ」と答える〔確かに、空想の中では、卵を産み落とした〕。看護婦は「違う」。「そうだってば」。「タバコも吸うの? さあ、白状なさい! 誰なの?」。「ママのシロップだよ。鎮静剤だよ。僕は麻薬中毒でも、精神錯乱でもない。元気一杯で、耳もいい。だけど、興奮するとおしっこが出なくなる。そんでもって、僕はよく興奮するんだ。トラブルを避けたかったから、女の子に頼んだんだ。男の友達はいないから。もう行っていい?」。コメント:確かに、妊娠の有無は尿検査で分かる。しかし、それは性交後2-3週間後に反応が現れるとあるので、ママと警官が原因ではなさそうだ。それとも、映画では、そんな細かいところまで考えていないだけなのか〔つまり、妊娠はママと警官のセックスの結果なのか〕?
  
  
  

この時、勝手な言い分が聞こえて来る。「I'm well impressed. You go on like that, now I'll be the other job. Shut up for all time. Don't do that to me please, s'il vous plaît, pretty please.」。これに激怒したミッキーは、思い切り頑張って、口からジェルボア・マウスを吐き出す(1枚目の写真)。床に叩きつけられたジェルボア・マウス(2枚目の写真)。ミッキーは、マウスに向かって、「にきび、役立たず、くそ野郎、いやらしいペニス! 毛むくじゃらのペパロニ!」と非難をエスカレートさせ、「お前なんか、いないんだ。今まで一度もな。存在しないんだ」と言い切る。「No, no, no, no, no! Have mercy!」と命乞いをするマウス。しかし、ミッキーは、「TVに戻れ!」と叫ぶと、一気に踏み潰す。つぶれたマウスの絵の破片が、ミッキーの頬についている(3枚目の写真)。ここまでずっとミッキーの空想上の出来事だが、ここから、そのテンションが上がる。遂にアルターエゴをやっつけたという高揚感! ミッキーは、大きな冠を被り、学校の上級生が両手を斜めに上げて作る「トンネル」の下を凱旋する(4枚目の写真)。
  
  
  
  

ミッキーの空想は続く。卵を抱いてベッドでママと一緒に寝ていると(1枚目の写真)、こっそり起きたママが、大事な卵を奪っていく。ミッキーは直ちに異変に気付き、飛び起きると、何もなくなった自分のお腹を見る(2枚目の写真)。さっそくママの部屋に行くと、そこでは、より巨大になった卵の上にママが跨っている。ミッキーは、「何してるの?」と訊き、返事がもらえないので、ママの手をつかんで、卵から降ろそうとする(3枚目の写真)。ママ:「これは巣なの。冷えないよう、抱いてやって、孵化させるのよ。誰かがしないと。孵化するには必要なの。幸せそうでしょ」。「僕のだ!」。「違うわ。あなた、羽毛布団に入るの 好きでしょ。卵だって同じ」。それから卵の争奪戦が始まる。これは、ミッキーが自主的に成長するか、ママの庇護下で成長させられる の争いだと言っていい。
  
  
  

遂に実力行使に出るミッキー。電動ノコギリを手に取ると、ママのベッドの羽毛布団をめくる。そこには1羽の雌鳥が ちょこんと座っていた。画面に赤い字が現れる。「ママ…」。そして、ノコギリで雌鳥の首を切断する。「ママ、悲しくて変だね」。「前と違ってきちゃった」。「安らぎなんて得られない」。「ママ、咎めてるなんて思わないで」。「こんな夢が始まって悲しいよ」(1枚目の写真)。「子供時代は終って、僕の時代になるんだ」(2枚目の写真)。「でも、また家で会おうね」。「ママ、心の中で望んでるだろ」。「可愛い子の成長を見ることを」。
  
  

再び2画面表示。ミッキーの部屋に置いてある大きな卵のヒビが広がり、中から手で押されて破片が床に落ちる。そこから、新しく生まれ変わったミッキーが姿を見せる(1枚目の写真)。彼は、殻から出ると、誇りで踏ん反りかえるように床に立つ(2枚目の写真)。こうして、ミッキーは、幼少期から思春期に移行することができた。ミッキーは、手を叩いて1画面(現実)に戻す。
  
  

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